
日本政策金融公庫は、創業融資のときによくお世話になる感じがしますが、もっと多くの融資を扱っており、日本の金融システムにおいて非常に重要な役割を担っています。普通の銀行と何が違って、どんなことをしてくれるのでしょうか。
- 金融公庫の業務内容と意義
- 主な融資制度
- 借りるメリット
- おわりに
- 金融公庫の業務内容と意義
日本政策金融公庫は実は株式会社なのです。正式名称を株式会社日本政策金融公庫と言いまして、財務省管轄の特殊会社です。特殊会社とは聞きなれない言葉が出てきましたが、これは特別法により設立される会社のことを言います。関係する特別法は「株式会社日本政策金融公庫法」です。そのまんまですね。
日本政策金融公庫法は平成19年5月25日に施行されました。その第一条の目的には、次にように記されています。
「株式会社日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担うとともに、内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な金融を行うほか、当該必要な金融が銀行その他の金融機関により迅速かつ円滑に行われることを可能とし、もって国民生活の向上に寄与することを目的とする株式会社とする。」
これによると一般の金融機関が行う金融を補完することを大前提として、
国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援し、
そして、金融秩序の混乱、災害、テロ、感染症による被害に対処するために頑張ってくれるのです。何だか創業融資って、数多くあるうちの一つでしかなさそうですね。
また、日本政策金融公庫の株式を100%日本政府が保有していることが法律に規定されています(第三条)。
日本政策金融公庫の役割として期待されていることは、民間金融機関からの借り入れがしにくいけれども、政策的な関連から、融資が必要かつ重要な企業へ貸付を行うことです。
政府も起業は経済の発展のためにも必要不可欠と考えており、メガバンク、地銀、信用金庫等では貸せない、創業時の融資を積極的に貸していただける金融機関が、日本政策金融公庫なのです。
皆さんの会社の目的にも「国民生活の向上に寄与する」ってのどうですか。クールじゃないですか。
- 主な融資制度
大きく分けて、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3分野がありますが、ここでは中小企業事業を見ていきます。その中でもさらに6つの分野に分かれます。
それは「新企業育成貸付」「セーフティネット貸付」「企業活力強化貸付」「環境・エネルギー対策貸付」「企業再生貸付」「その他の融資」です。ここでその他の融資や、それぞれの融資上限金額、貸付期間等の詳細は、日本政策金融公庫のホームページを直接ご覧ください。
- 新企業育成貸付
(a) 新規開業資金 新規事業、事業開始後約7年以内の場合
(b) 女性、若者/シニア 女性または30歳未満、55歳以上が新規事業
起業家支援資金 または事業開始後約7年以内の場合
(c) 再挑戦支援資金 廃業歴のある者が、新規事業あるいは事業開始後約7年以内
新事業活動促進資金 経営多角化、事業転換等の第二創業の場合
(d) 中小企業経営力 新規事業分野の開拓のために事業計画を策定し、
強化資金 認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けている場合
- セーフティネット貸付
(a) 経営環境変化対応資金 売り上げが減少する等業況が悪化している場合
(b) 金融環境変化対応資金 取引金融機関の経営破たんなどにより、
資金繰りに困難を来している場合
(c) 取引企業倒産対応資金 取引企業の倒産により経営に困難を来している場合
- 企業活力強化貸付
(a) 企業活力強化資金 卸売業、小売業、飲食サービス業またはサービス業を営む者が店舗の新築・増改築や機械設備の導入を行う場合
(b) IT活用促進資金 情報化投資を行う場合
(c) 海外展開・ 海外展開を図る場合
事業再編資金
(d) 地域活性化・ 雇用創出効果が見込める設備投資を行う場合(但し「企業
雇用促進資金 立地計画」又は「事業高度化計画」の承認が条件)
(e) 中小企業会計 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計
活用強化資金 に関する指針」を適用している場合
(f) 事業承継・集約 経済的又は社会的に有用な事業や企業を承継・集約化する場合
・活性化支援資金
- 環境・エネルギー対策貸付
- 環境・エネルギー 非化石エネルギー設備や省エネルギー効果の高い設備を
対策資金 設置または環境対策の促進を図る場合
- 社会環境対応施設 災害発生に備えて防災に資する施設等を整備する場合
整備資金
- 企業再生貸付 民事再生法の規定による再生手続開始の申立て等あるいは
事業再生支援資金 民事再生法に基づく再生計画の認可決定等を受けた場合
- その他の融資制度
- 災害復旧貸付 指定された災害により被害を被った中小企業
- 東日本大震災 東日本大震災により被害を受けた場合
復興特別貸付
- 保証人特例制度 直接貸付を利用する場合
- 挑戦支援資本強化 直接貸付において、新企業育成貸付、企業活力強化貸付
特例制度 または企業再生貸付を利用し、地域活性化、一定の雇用効果
(資本性ローン) が認められ、地域社会に不可欠、高度な技術力を持つ事業
- 公庫融資借換特例制度 セーフティネット貸付制度の経営環境変化対応資金及び
金融環境変化対応資金、東日本大震災復興特別貸付又は
企業再生貸付制度の企業再建資金による貸付を受ける場合
- 設備資金貸付利率 設備投資を行う場合
特例制度
- まち・ひと・しごと 「まち・ひと・仕事創生総合戦略」の「基本目標」達成に
創生貸付利率特例制度 貢献する場合
- 5年経過ごと 最終期限までご契約時に定められた固定金利を適用する方法、
金利見直し制度 契約時から5年経過ごとに金利を見直す方法のいずれかを、 選択可。 – –
- 借りるメリット
日本政策金融公庫は、元々国民生活の向上のための金融機関ですし、一般の民間金融機関よりも親身になってくれます。また○色の銀行のように貸し剥がしなんてことはありません。もっともあくまでも民間金融機関の補完という立場で民業圧迫しないように、非常に気を使われています。時と場合によっては民業圧迫の名のもとに積極的に融資しない言い訳をされているのでは?というときも。
会社にとって最初と最後の駆け込み寺として、頼りにするのが良いでしょう。もっともあなたの会社が箸にも棒にも引っかからない場合やにっちもさっちもいかなくなってからではそれは無理というものです。節度をわきまえて経営しましょう。
- おわりに
日本政策金融公庫は、創業融資のときに一番お世話になりますが、実はもっと多くの場面での融資を扱っている政府系金融機関です。
そして創業時や困っているときには一番親身になってくれる金融機関ではないかと思います。皆さんの会社が大きくなるうちにもっと色々と助けていただける場面が増えるのではないでしょうか。