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メディアで繁盛店と謳われ、行列のできる店の代表であるラーメン店。それを傍目でみたときに、自分も行列店を作って一儲けできるのではないかと安易に飛びつく人も多いのですが、開業1年で半分の人が去ってしまう厳しい業界です。ラーメン店は最初から儲けるつもりで期待通りに儲けられる業種ではありません。さて、あなたは残るラーメン店主になれますでしょうか。

[目次]
1. ブレインストーミング
2. 開業にあたっての注意点
3. 競合店分析やお店の特色づくり
4. 物件
5. 開業資金
6. 収支計画

1. ブレインストーミング
行列店を見ると自分でもこうなりたいと思うのは勝手ですが、そんな安易に行列店が作れるほど甘くはありません。でも行列を見ると儲かるのではないかと思い込み、つまらない情報商材に引っかかってついつい安易に開業してしまいがち。
ラーメン繁盛店の多くは、最初から儲けようと思って開業したのではなくて、結果としてそうなったという方々です。ビジネスパーソンであることは間違いないのですが、どちらかというとラーメン職人は芸術家に近い存在ではないかと思います。つまり繁盛店主は芸術家であり、ビジネスパーソンであった(あるいは経営しているうちになった)という感じです。
芸術家で最初から儲けようと思って芸術家になった方がどのくらいいらっしゃるでしょうか。儲けたいという気持ちはあったかもしれませんが、自分の世界を追求し、その中でごく一部の方がプロの芸術家として生きていっているだけの話であり、最初から儲けようと思って作品を世に出し、計画的に儲けられたという方は皆無に等しいでしょう。たまにミュージシャンの世界ではそのような計画的に儲けた天才もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方は音楽屋であって音楽家ではないと申しておきましょう。
ラーメン「屋」と申しては非常に失礼にあたるかもしれません。繁盛店になった方、まだ繁盛店ではない方、色々いらっしゃるでしょうが、「ラーメン家」と呼ぶにふさわしい方が多くいらっしゃる世界です。
さて、あなたはラーメン家として、イメージできましたでしょうか。それともラーメン屋として一儲けしようと思っておりますでしょうか。

2. 開業にあたっての注意点
ラーメン業の市場規模は5,560億5,000万円(総務省・経済産業省「平成24年経済センサス―活動調査―」)となっております。平成26年度の総務省調査による「1世帯当たりの品目別支出金額(総世帯)」によれば、ラーメン5,929円、そば・うどん5,399円、ハンバーガー3,106円と、ラーメンが日本人の人気食であることがわかります。また、外食全体の売り上げが下がっている中でラーメンは比較的堅調にシェアを伸ばしており、全体的には明るい業界ではありますが、毎年開業と同じだけ廃業があり、厳しい業界であるといえましょう。

実務的な話としまして、ラーメン店を開業する際の届出手続について記しておきましょう。
まずお店を開業する場所を管轄する保健所に対しては、飲食店営業許可申請証、設備の大要・配置図、食品衛生責任者の資格を証明するものの提出が必要になります。もし深夜0時以降に酒類を提供する場合は、警察署に対して「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出します。
税務署に対しては、個人であれば開業届出書、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書(家族雇用の場合)、給与支払事務所等の開設届出書(従業員雇用の場合)、法人であれば青色申告承認申請書、棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書、給与支払事務所等の開設届出書の提出が必要です。
従業員を含めた、出入りする人の人数が30人を超える場合、防火管理者の資格が必要になります。これは消防署に確認するとよいでしょう。

3. 競合店分析やお店の特色づくり
ラーメン店が生き残るためにはお客様が何度でも訪れたくなる魅力が必要です。正直最初の数年間は儲けることよりも生き残ることを考えることになるでしょう。そこで大切なことは、やはりコンセプトづくり、あなたらしさを店やラーメンに込めることです。ここまでくると、ラーメンに魂を込めるイメージです。
あなたらしさが大切だからと言って、奇をてらうことが良いこととは限りません。「スイーツ味のラーメン」とか「クワガタとカブトムシの天ぷら入りのラーメン」なんて売り出そうものなら、スイーツ味の方は物珍しさで一度は訪れるかもしれませんが、何回も食べに来ようとは思わないでしょう。「クワガタ天ぷらラーメン」は最近、食糧難を想定して昆虫食を普及されている方々もいらっしゃいますが、一般的にはゲテモノ扱いです。
ラーメンに大切なものは「当たり前の味、だけど何だか違う味」という考え方で、「何だか違う」ところに顧客から支持されるあなたらしさが必要なのです。

次にコンセプトづくりを行ってみましょう。
(1) なぜラーメン店を開業したいのか。
自分の中での「究極」と「至高」に決着をつけたい。
(2) どんなお店を作りたいのか。
来店者が懐かしいと思わせるお店作り。
(3) 看板メニュー
金銀麺 vs 流星麺
<それぞれの特色>
金銀麺:長期熟成天然醸造醤油をラーメンのカエシに用いる。
流星麺:動物系と魚介系のダシが見事に組み合わされたスープ。
ライバルメニューが同じラーメン店で出されているのも乙かもしれません。
お客様の中でも自分は金銀派、流星派と別れ、それぞれ顧客同士で金銀が良い、流星が良いと話題にしてくれたら儲けものです。このネタわかる人は食通とお見受け致します。

ラーメン人気店の某プロデューサーは、「一流の人に共通するのは、ラーメンに対する愛情の深さ」と言います。そして「繁盛店になるには時間がかかるもので、人気が出るまで我慢が必要」とも。メディアで取り上げられることが近道という意見もありますが、一気に有名になることで多くの客を引き付けた結果、期待が高ければ高いほど味への評価が厳しくなり、期待を裏切られると、逆においしくないと口コミが広がってしまうこともあるそうです。そして一時期ランキング一位にまで上った店がすぐに閉店してしまうこともあるとか。事前の期待が高くなりすぎると事後の評価がそれを上回るのは難しく、機を待つ粘り強さが必要なのではないかと考えさせられます。

4. 物件
ラーメン店は立地で決まるといっても過言ではありません。有名店主の2店目であれば、隠れ家的な場所でも集客力はありますが、まだこれからという方は十分に商圏調査を行ったうえで、店を出す場所を決めましょう。そのときにあなたのコンセプトの立地特性に合わなければ美味しいお店でも繁盛しないという考え方が必要です。
例えばオフィス街に店舗を構えるケースでは、ランチタイムが稼ぎ時となります。特にビジネスパーソンは昼休みが1時間しか取れませんから、店までの移動で30分かけるとそれだけで落ち着いて食事がとれなくなります。従いまして片道10分以内、目安としては500メートル以内にある店を好みます。さすがに毎日同じお客が来ることは難しいでしょうが、週1、あるいは週2ペースで立ち寄っていただきたいもの。この場合、癖のないリピーターとなってくれる味が重要となります。またオフィス街ですので、女性客も取り込みたいところです。そのため、サイドメニューとしてサラダやスイーツを用意してもよいでしょう。
次に繁華街に店舗を構えるケースでは、既に競合店もあることでしょう。従い、彼らより目立つことが重要です。珍しさ、メディアで取り上げられるほどのインパクトの強いもの(超特大値引き等)を考えてみましょう。
そしてロードサイドに店舗を構えるケースでは、看板や店の作りが、遠くからくる車でも見える店づくりが必要です。ラーメン屋に入りたいと思っていても、車ではよく見ていても、人と話していると気づかずに通り過ぎ去ってしまうものです。ファミリー層相手にはヘルシーを、ドカチン相手にはお肉たっぷりのスタミナ系のものが受けるでしょう。小さなお店で物販はスペース的にも厳しいですが、ロードサイド型であれば検討の余地ありです。自社の生ラーメンを販売することも収益力アップには効果があります。
そして住宅街に店舗を構えるケースでは、地元のお客様をどうリピーターにしていくかがカギです。帰宅途中のビジネスパーソンにふらりと寄ってもらう。あるいは昼間からファミリー層を意識し、テーブル席を設けてくつろいでもらう。お子様用のラーメンも用意する等工夫してみてはいかがでしょうか。
このようにコンセプトは立地の決定にかなり影響を与えるといってよいでしょう。
出店地域を調査するにあたっては、昼間人口、夜間人口、最寄り駅の乗降客数、業種別の就業者数、地域住民の外食費用、地域の飲食店数と年間販売額等を押さえておきましょう。
競合店は念のため3キロ以内の店舗を対象とし、客数、メニュー、単価、客層等を注意深く見ておきましょう。またラーメン店だけが競合店とも限りません。定食やファミリーレストランも十分に競合といえます。
出店エリアの商圏調査が済み、目途がつき、契約に至り、契約書上、物件の広さ、賃料等契約事項は約束通りか、夜の営業が許されているか、改めてラーメン店だが問題がないか等を確認しましょう。
お店がうまくいくとは限りませんので、撤退条件も念のため見ておく必要があります。原状復帰が前提であれば、退去時に費用が掛かります。お店がうまくいかなくて撤退せざるを得ない場合は、当然のことながら、資金繰りに窮していることが多いため、払えない可能性も出てきます。しかし契約上払わなければならず、別の場所でラーメン店を再開したい場合、足かせになりますから、撤退時にコストがあまりかからないようにできるのであれば、契約前に調整しておいた方が無難です。
店の広さによっても売り上げは決まってしまいます。なぜならば席数には限界があるからです。お客様は自分の都合でしか来店しませんから、お客様を待たせるくらいに忙しいこともあれば、お客様が全く来ない時間帯もあるでしょう。そのピーク時が最大限にこなせる上限の顧客数となります。物件の条件によっては、主に席数の増減で計画の修正も必要になることでしょう。席数が予定よりも見込めない場合、ラーメンだけではなく、サイドメニューやアルコールを充実させ、一人当たり単価を上げていくメニュー構成が必要となるかもしれません。
商売の経験が少ないと、一人当たり単価や回転数、時間当たり来店者数や原価についても全く想像できないこともあるでしょう。ラーメン屋を始めたいのであれば、何らかの形で、できる限り長い期間経験を積まれると思われます。経験に基づいた数字こそ融資担当者を納得させるものはありません。
物件や内装だけでなく、設備や機能もチェックしなければなりません。電気、ガスの容量、ガスの栓数、給排水設備も重要です。厨房からの匂いや煙、油は周辺とのトラブルのもととなります。厨房内がサウナのようになってしまうと、調理人の作業効率は落ちますし、何より厨房と客席は同じ空間なのですから、お客様へ不快感を与えてしまいます。
排気設備は数百万円単位の投資が必要になります。また、空調設備についても、メンテナンスが借主、貸主どちらが責任を負うか(費用負担)をチェックしておいた方が良いでしょう。
飲食店はごみに関するトラブルも多いので、ごみの捨てる日、捨て方等も事前確認しておきたいところです。
居抜き物件は設備が既についていて安上がりに済む場合もありますが、設備に故障が起きやすく、買い替えとなると設備の廃棄代も含め、安物買いの銭失いになることもありますので、注意しましょう。

5. 開業資金
ここでは20坪程度で都内の駅から徒歩数分以内、13席のラーメン屋を想定してみました。どちらの駅かはご想像にお任せします。

(1) 物件取得費
保証金、前家賃、仲介手数料
(2) 設備工事費
内装工事費、設備工事費(空調工事、電気、水道、ガスの工事、厨房設備込)
(3) 備品等
レジスター、テーブル、椅子、券売機等
(4) その他諸経費
仕入、運転資金

6. 収支計画

顧客単価を昼900円、夜1,300円(餃子、アルコール等も提供)として、1日平均95人来店と仮定しました。

設備投資は3,000,000円、10年で償却。
借入は900万円とします。期待ケースでは6年で返済可能です。ケース4及び期待ケースの売り上げであれば、十分に融資の検討余地があります。ケース3でも若干人件費を下げれば融資の可能性が出てきます。仕入れは30%としています。期待ケースでは店主の他、店主の奥さんとアルバイトを1~2名雇っている計算にしております。
ラーメン店は熱いスープとともに食べることから、ラーメン好き以外では夏は敬遠しがちになり、11月~3月の売り上げが年間の中で高いものとなっております。また、火と油を大量に使うことから、設備の老朽化は早く、3~5年で調理場の改修をする必要が出てきます。そのときに再び融資で資金調達を行うか、あるいはそれを見越して内部留保しておきたいところです。


日本政策金融公庫の融資が通る可能性は?

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