
資本金は会社の顔のようなものです。無名の企業であれば、あなたと初めて会って取引を考える人が最初にチェックするのは、あなたの会社のホームページと、、、、資本金です。大きければ大きいほど信用力が高まる魔法のような数字です。
- 資本金とは
- 資本金の決め方
- 資本金の統計データ
- 資本金にできるもの
- 資本金が少ない場合の注意点
- おわりに
- 資本金とは
出資者が会社に払い込んだ金額を基礎として設定される一定の額です。以前は会社の設立に際して、株式会社は資本金1,000万円以上というような最低資本金制度が存在しましたた、2006年5月に施行された会社法ではこの制度は廃止され、1円の資本金でも株式会社が設立できるようになりました。
「資本」と広い意味でとらえますと、会社が利益を上げて積みあがった留保利益も「資本」にはなりますが、「資本金」は株主が支払った「払込資本」であって、資本準備金としなかったものとなります。
資本金を登記簿謄本に載せようとすると、登録免許税が資本の金額に応じて1,000分の7かかってしまいます。設立時の登記は多かろうと少なかろうと資本金の登録免許税として最低150,000円は請求されます。もっとも設立時でも2,200万円を資本金としますと、154,000円の登録免許税がかかります。
登録免許税を低くするために、払込金額の2分の1を資本準備金とすることができます。登記簿謄本上、資本準備金は出てきませんが、純資産の部に厚みを持たせることで、借入の評価点を上げるために使えます。
- 資本金の決め方
業種によっては資本金が1,000万円規制上必要とかある場合はやむをえませんが、その他の企業では資本金をどのように決めたらよいのでしょうか。
よくある場合が手持ちの金が10万円しかないから、それで、という方。もちろん設立は可能ですが、会社の設立登記で20~30万円は使ってしまうわけですから、もうその時点で欠損の会社です。融資を受ける際には圧倒的に不利になりますね。
その他、設立時の消費税免税企業になるように資本金を1,000万円未満にして、とお考えの方も多いと思いますが、開業当初は赤字の場合も多く、場合によっては消費税課税業者にしておいて、消費税を還付できるようにしておいた方が良いケースもございます。そんな単純なことで資本金を決めるべきではありません。
資本金の本質を考えてみましょう。資本金とは「元手」です。つまり、この事業をやるために初期投資がどれくらいかかるのか、そして将来の収支や資金繰りを考えると、数年間でいくら赤字になる。最低でも欠損が出ないために妥当な資本金はいくらか、で決めるのがベターな考え方ではないでしょうか。
欠損が出た時点で融資が難しくなります。従って、欠損が出ない資本金を当初から余裕をもって設定しておくのです。
- 資本金の統計データ
もっとも、将来の収支や資金繰りなんて予想したところで当たらないのもまた現実です。実際は資本金として現在出せる金額を出しているだけでしょう。法務省の平成26年度のデータですが、会社設立時の資本金は以下の表の通りとなります。300万円未満が57.3%ですので、旧来の有限会社程度の資本金はないと、とお考えの方も多いのでしょうが、100万円未満が約4分の1です。要するにお金がないのです。
100万円未満 | 100万円以上 | 300万円以上 | 500万円以上 | 1000万円以上 | 2000万円以上 | |
件数 | 25,842 | 35,142 | 18,823 | 21,112 | 3,744 | 1,783 |
割合 | 24.3% | 33.0% | 17.7% | 19.8% | 3.5% | 1.7% |
出所:法務省「登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額」
(平成26年度)
- 資本金にできるもの
一般に資本金にできるものは、当然お金ですが、その他のものでも資本金として認められる場合があります。それが「現物出資」というものです。「現物出資」とは金銭以外の財産を目的とする財産出資のことです。そもそも出資は金銭でなされるのが原則ですが、設立や増資の際にも金銭以外の財産による出資が制度上認められています。もっとも金銭以外のものですから、過大な財産とならないように、500万円を超える現物出資は専門家の評価が必要となるなど、厳しい規制があります。
また、安易に現物出資をすべきでない理由は、例えば、不動産等は譲り渡した個人に譲渡所得税が発生したり、譲り受けた会社に不動産取得税が発生したりと、モノを個人から会社に移転させただけで税金のオンパレードになる可能性があります。従いまして、現物出資を検討される場合には税理士等の専門家に確認した上で行いましょう。
なお、現物出資が可能なものには次のものがあります。
- 金銭債権 売掛金、受取手形、貸付金、未収入金等
- 棚卸資産 製品、商品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品等
- 不動産 土地、建物、地上権、地役権、採石県、賃借権等
- 有形固定資産 建物付属設備、構築物、機械及び装置、船舶、車両、工具器具備品等
- 無形固定資産 営業権、特許権、借地権、地上権、商標権。実用新案権、意匠権等
- 有価証券 国債、地方債、社債、出資主尾見、株券、受益証券等
一般的なものを上げましたが、現物出資になるかどうかについては、専門家に確認してください。
- 資本金が少ない場合の注意点
当然のことながら、資本金が少なければ会社の信用力がそれだけ劣ります。もしあなたがどんな無名でも、資本金1億円の会社の社長だったら、結構すごい人なのかも、と思われてしまいます。たかが資本金、されど資本金。資本金=持ってる現金ではないのですが、信用力を高めてくれる魔法の数字には違いありません。
資本金が1万円の会社であれば、すぐに欠損となり、融資に不利なだけでなく、立派な会社との取引もまともにできませんし(資本金が少ないと取引時に保証金が要求される等)、銀行口座すらも作れない場合があります。資本金は多いに越したことはないのです。
6. おわりに
資本金は今、あなたが持っているお金を出せばよいというものではありません。資本金は元手であり、数年間赤字でも欠損にならない程度の金額であった方がベターです。資本金は会社の信用力を表します。多ければ多いにこしたことはありません。業種によっても、その程度は持っていないと、というのもあるでしょう。例えば、資本金100万円で不動産売買会社です、と言われても、ですよね。規制業種によっては最低資本金が要求されるところもあります。もちろん多ければ多いほどいいということもありません。資本金の金額で、たとえ業績が赤字だったとしても支払う税金の均等割が高くなりますし、資本金1億円を超えると外形標準課税もかかります。
従いまして、適正な資本金というものはありません。あくまでも総合的に判断すべきものです。