
創業間際の実績がない会社は、どちらの銀行に行っても門前払いです。そこで創業時にお世話になる融資には、日本政策金融公庫の新創業融資制度と自治体の制度融資があります。さて、このうち新創業融資制度にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
- 新創業融資制度とは
- 新創業融資制度のメリット及びデメリット
- 創業融資を受けるためにやるべきこと
- おわりに
- 新創業融資制度とは
新創業融資制度とは、日本政策金融公庫が創業時に用意している、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方向けの融資制度です。
雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件で次のいずれかに該当する場合が対象となります。
(1)雇用の創出を伴う事業を始める方
(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
(6)地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
(8)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方
- 新創業融資制度のメリット及びデメリット
- 新創業融資制度のメリット
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関であり、新産業の創出や育成を政策的に行っており、一般の民間金融機関にとってはリスクの高い(特に創業時)企業への融資を積極的に行っております。従って、「会社を設立して間もない企業が借りることのできる数少ない制度のうちの一つ」です。
制度上は「最大3,000万円が無担保無保証、かつ連帯保証人にならなくても借りる」ことができます。
自治体の制度融資では、自治体、信用保証協会、窓口の民間金融機関と三者が絡むのでどうしても時間がかかりますが、創業融資は日本政策金融公庫単独で判断と手続きをするため、「スピーディー」です。
自己資金割合ですが、明確に最低でも「10分の1」となっています。制度融資は自己資金割合が不明瞭であり、自治体によって異なります。制度融資の場合、信用保証協会の保証が8割と限定的なので、民間金融機関がリスクを負いたがりませんから、自己資本比率が高くないと融資は厳しいでしょう。
- 新創業融資制度のデメリット
自己資金要件の際に「通帳を見せることがほぼ要件」になってきます。何となく自分の通帳を見せることに抵抗のある方はいらっしゃるでしょう。
制度融資では、自治体が利子を補給することで、一般に利率は低いです(但し、信用保証料を考えると必ずしも低いとは限らない)。それに対して、創業融資では利率が高めになります。これが数少ないデメリットであると思われます。
- 創業融資を受けるためにやるべきこと
- 自己資金を貯めること
事業へ取り組む熱意を示し、あなたの計画性を示すため、前職での給与をコツコツと貯めておきましょう。そしてできる限り融資の金額を少なめにするよう努力しましょう。自己資金が多ければ多いほど、当然ですが融資の確率が高まります。
- 実績を積むこと
会社としての実績がない以上、経営者自身の今までの事業実績が問題になります。今、在籍している会社で、経験を存分に積んでおきましょう。独立した際にもそこで学んだスキルや失敗の回避方法は役に立つはずです。
- 事業計画書・資金繰り表を作成すること
事業計画書を作成し、あなたのコンセプトを固め、どこが差別化できるのか、そして収益をどのようにあげるのか、費用はどれくらいで、利益はどの程度出せるのかの計画を事前に、徹底的に立てておきましょう。やってみなければわからないことも多く、事業を走らせながら修正することも多いでしょうが、備えあれば憂いなしです。しておく準備は全く損になりません。
資金繰り表も必要不可欠です。いつまでにどれだけ収益を上げ、資金を回収しておかないとお金が回らないのかを把握することは、融資を受けるだけでなく、あなたが経営するうえでもとても大切です。会社は自転車操業が当たり前だ、という気持ちは捨てましょう。結果的にそうなることはしばしばですが、資金で苦しまなければ前向きなことにエネルギーを使えます。自転車操業の会社は得てして成長しません。
4.おわりに
創業融資は起業家にとっての入り口です。会社経営で一番重要なことは、顧客から支持されるサービスを提供することではありますが、大事なことは、始めたからには続けること、続けるためには資金繰りを危うくさせないことです。数か月は売り上げも厳しいでしょうから、創業融資で借りられたお金は、経営者にとっての保険のようなものです。会社が大きくなるうえで、無借金経営は厳しいでしょうし、最初に融資を受けることで、今後の資金調達においても勉強にもなります。
もし今、自己資金が豊富であっても、今後のために受けておいても損はないでしょう。お金を借りて返済して実績を積んでおかないと、いざ借りるときに必要な金額を借りられないものです。