
起業したら、自己資金が不足しているときにお世話になるのが、起業時における融資です。概ね、日本政策金融公庫の創業融資か、自治体の制度融資を用いることになります。起業時の融資って案外受けやすいって知ってましたか?
起業時の融資が受けやすい理由やどのような融資制度があるか見ていきましょう。
- 起業時の融資
- 起業時に利用できる融資制度の例
- おわりに
- 起業時の融資
なぜ起業時の融資が受けやすいのか。当然のことながら、数年間の実績があって利益を出し続けていれば、そちらの融資が受けやすいことは言うまでもありません。ここで重要なことは利益を出し続けているか、がポイントです。実績が損失であると、どうやっても借りられません。従いまして、逆説的ではありますが、起業時の融資というのは先がどうなるかわからないので、実績があって利益が継続している企業よりも借りづらいですが、実績が損失の起業よりははるかに借りやすいのです。
実績が数か月で上がるかどうか不安の方は、実績がダメになる前に、さっさと借りておく方が得策です。
- 起業時に利用できる融資制度の例
まずは日本政策金融公庫の創業融資から見てきましょう。起業時に利用できる主な融資制度は次の通りです。
(a) 新規開業資金
利用可能者:次のいずれかに該当される方
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(ⅰ)現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
(ⅱ)現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、
その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
- 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
- 雇用の創出を伴う事業を始める方
- 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
- 地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
- 公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
- (1)~(8)のいずれかを満たして事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方
資金使途 :新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする資金
融資限度額 :7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 :設備資金 15年以内(特に必要な場合20年以内)
<うち据置期間3年以内>
運転資金 5年以内(特に必要な場合7年以内)
<うち据置期間6ヵ月以内(特に必要な場合1年以内)>
利率(年) :
[基準利率]担保あり1.25%~1.95%、担保なし2.20%~2.30%(返済期間による)
・独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方の設備資金・運転資金[特利A]担保あり0.85%~1.55%、担保なし1.80%~1.90%((返済期間による)
・認定商店街活性化事業計画を作成した商店街振興組合等が運営する商店街の空き店舗において事業を行うために必要な設備資金・運転資金は[特利B] 0.60%~1.30%、担保なし1.55%~1.65%(返済期間による)
・技術・ノウハウ等に新規性がみられる方の運転資金及び設備資金(土地取得資金を除きます。)[特利C]担保あり0.35%~1.05%、担保なし1.30%~1.40%(返済期間による)
保証人・担保: 原則不要
(b) 女性、若者/シニア起業家支援資金
利用可能者:女性または30歳未満か55歳以上の方
新規開業、あるいは事業開始後約7年以内
資金使途 :新規事業のため、事業開始後必要となる資金
融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
利率 :運転資金及び設備資金(但し土地取得資金を除く。)
担保あり0.85%~1.55%、担保なし1.80%~1.90%(返済期間による)
技術・ノウハウ等に新規性が見られる方の運転資金及び設備資金
(但し、土地取得資金を除く)
0.60%~1.30%、担保なし1.55%~1.65%(返済期間による)
土地取得資金
担保あり1.25%~1.95%、担保なし2.20%~2.30%(返済期間による)
返済期間 :設備資金 15年以内(特に必要な場合は20年以内)<据置期間2年以内>
運転資金 5年以内(特に必要な場合は7年以内) <据置期間1年以内>
担保・保証人:原則不要
(c) 新創業融資制度
利用可能者 : 次の1~3のすべての要件に該当する方
創業の要件 :
・新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
・雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件
次のいずれかに該当する方。ただし、本制度の貸付金残高が300万円以内(今回のご融資分も含みます。)の女性(女性小口創業特例) については、本要件を満たすものとします。
(1)雇用の創出を伴う事業を始める方
(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
(6)地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
(8)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方
・自己資金の要件
事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方。ただし、以下の要件に該当する場合は、自己資金要件を満たすものとします。
(1)前2(3)~(8)に該当する方
(2)新商品の開発・生産、新しいサービスの開発・提供等、新規性が認められる方
(ア)技術・ノウハウ等に新規性が見られる方
(イ)経営革新計画の承認、新連携計画、農商工等連携事業計画又は地域産業資源活用事業計画の認定を受けている方
(ウ)新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方
(3)中小企業の会計に関する指針または基本要領の適用予定の方
資金使途 : 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金
融資限度額 : 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
返済期間 : 各種融資制度で定めるご返済期間以内
利率(年) : 基準利率2.40~2.50%、特利A2.00%~2.10%、特利B1.75%~1.85%、特利C1.50%~1.60%、特利D1.00%~1.11%
担保・保証人 : 原則不要
(d) 中小企業経営力強化資金
利用可能者 : 次のすべてに当てはまる方
・経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
・自ら事業計画の策定を行い、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方
資金使途 : 「ご利用いただける方」に該当する方が、事業計画の実施のために必要とする設備資金及び運転資金
融資限度額 : 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
ご返済期間 : 設備資金 15年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金 5年以内(特に必要な場合は7年以内)
<うち据置期間1年以内>
利率(年) :
[特利A]担保あり0.85%~1.55%、担保なし1.80%~1.90%(返済期間による)
女性または30歳未満か55歳以上の方で、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方[特利B]担保あり 0.60%~1.30%、担保なし1.55%~1.65%(返済期間による)
担保・保証人:原則不要
次に自治体の制度融資の概要を見てみましょう。都道府県や市町村によって細部は異なりますので、詳しくは各自治体のホームページをご覧ください。ここでは東京都の制度融資(創業融資のみ)を記載しました。
(e) 創業融資
①から③のいずれかに該当するもの
①事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有するもの
②創業した日から 5 年未満である中小企業者または組合
③分社化しようとする会社または分社化により設立された日から 5 年未満の会社
融資限度額: 1 企業・1 組合 2,500 万円
※①は自己資金に 1,000 万円を加えた額の範囲内
融資期間 : (運転資金)7年以内、(設備資金)10年以内。据置1年以内を含む。
保証人 : (法人)原則代表者、(個人)原則不要、(組合)原則代表理事
物的担保 : 原則として不要
保証料補助: 全事業者2分の1
融資利率 :
3 年以内 2.1%以内
3 年超 5 年以内 2.3%以内
5 年超 7 年以内 2.5%以内
7 年超 2.7%以内
または変動金利 短プラ+ 0.9%以内
[全部保証利率]固定金利
3 年以内 1.9%以内
3 年超 5 年以内 2.1%以内
5 年超 7 年以内 2.3%以内
7 年超 2.5%以内
または変動金利 短プラ+ 0.7%以内
- おわりに
数年間の利益の実績を有する会社が一番融資を受けやすいのですが、数年たって赤字の垂れ流しの会社よりも、先行きがまだわからない起業時の融資の方がまだ借りやすいと言えます。その際には日本政策金融公庫の創業融資と自治体の制度融資があります。あなたに適した制度を活用しましょう。