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日本人に好きな料理はと聞くと、必ず誰に聞いても3本指に入ってきそうな料理、カレー。どこの国が発祥か、それを忘れ去るほど原形をとどめていない日本人のカレー。誰もが気楽に作れるので、家庭料理を凌駕するだけの味を持っていないと勝負ができない世界ではありますが、カレー屋で成功するのはどんなお店なのかを覗いてみましょう。

[目次]
1. ブレインストーミング
2. 開業にあたっての注意点
3. 競合店分析やお店の特色づくり
4. 物件
5. 開業資金
6. 収支計画

1. ブレインストーミング
カレールーをスーパーで買って来れば、あとは適当に野菜とお肉を炒めて、ぶち込むだけ。ご飯にかければカレーライスの出来上がり。面倒な場合はレトルトカレーもあります。つまりわざわざ外食しなくても家で簡単に食べられるんですね。家族で食べる場合には、作ってしまった方が何日か持つし、みんなで食べられるしコストパフォーマンスが高いのです。カレーといえばお袋の味の代表ですし、どんな店の料理を食べても、うちのカレーが一番おいしいに決まっています。でもお袋もいつまでカレーを作ってくれるわけにもいきません。それが嫁に代わることになっても。
つまりあなたはお客様のお袋の味に挑戦しようというわけです。いい度胸です。さて、どんなカレーを作るか見えてきましたでしょうか。

2. 開業にあたっての注意点
お袋の味に挑戦して、喧嘩を売って勝っているのは、皆さんもご存知のCoCo壱番屋さん(以下、「CoCoイチ」といいます)。辛さは大人と子供で好みに違いがあり、お父さんは辛い方が好きなんだけど子供は甘い方が好きというと、お父さんが実は我慢しているのです(お袋はいつも子供の見方であり、旦那の味方はしません)。お袋の味は良かったんだけど、嫁の味は、と思っているお父さんも多いかもしれません。嫁に「トンカツカレー食いたい」といっても、「スーパーに勝手にあなたが買ってきて、どうぞご自由に」と言われてしまいご機嫌斜め。
であればお父さん、外出先で自由に辛さを選べ、嫁が面倒がる「から揚げ」や「トンカツ」をトッピングして「自由に食べたいわ、お袋の味にはかなわないけど嫁の味より全然マシ!」と口に出してはいけません。CoCoイチさんはそういう方を相手に良いところを突かれて商売しています。脱帽です。
なかなかこのような戦略はこれから始める皆さんは描けないのではないでしょうか。描けないからダメではなく、別の戦略を描けばよいことです。むしろCoCoイチさんと同じことはやってはいけないのです。

カレー業の市場規模は890億円(株式会社富士経済調べ:2013年)となっており、実は同時期の焼肉店5,200億円、宅配ピザ店1,260億円と比較しても見劣りします。ちなみにCoCoイチさんの2013年度の売り上げは710億円ですから、なんと業界シェア80%。何の策もないのであれば、彼らのフランチャイズやった方が生き残れる確率は高いでしょう。

実務的な話としまして、カレー屋を開業する際の届出手続について記しておきましょう。
まずお店を開業する場所を管轄する保健所に対しては、飲食店営業許可申請証、設備の大要・配置図、食品衛生責任者の資格を証明するものの提出が必要になります。もし深夜0時以降に酒類を提供する場合は、警察署に対して「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出します。
税務署に対しては、個人であれば開業届出書、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書(家族雇用の場合)、給与支払事務所等の開設届出書(従業員雇用の場合)、法人であれば青色申告承認申請書、棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書、給与支払事務所等の開設届出書の提出が必要です。
消防署に対しては、防火対象物使用開始届、店舗の案内図、消火器や避難器具等の配置図、立面図、断面図、仕上表等の提出が必要です。もし従業員を含めた、出入りする人の人数が30人を超える場合、防火管理者の資格が必要になります。これは消防署に確認するとよいでしょう。

カレー屋を開業する前に、同じ飲食店で、専門学校で、あるいは完全に独学で修行させている方がいらっしゃいます。他の業態と違って、カレー屋は独学でもオリジナリティを作りやすいと思います。それぞれ一長一短があり、飲食店で修行する場合に、メリットはお店の運営を現場で学べますが、デメリットは手取り足取り技術指導してもらえない、思い通りのスキルが手に入らない、専門学校で修行する場合に、メリットは基本的な学習から丁寧な実技指導を受けられますが、デメリットは学費がかかったり、実務で学べないこと、そして完全に独学の場合に、メリットは学費がかかりませんが、デメリットとしては独善に陥ったり、自分で試行錯誤しなければならず、しなくてもいい苦労をしてしまう場合があります。

3. 競合店分析やお店の特色づくり
カレー屋こそコンセプト勝負が重要です。飲食は多かれ少なかれ、個人の味覚の違いがありますから、万人受けする味を狙っていては大規模展開を行うしか勝者になりません。お金のないあなたは、ゲリラ戦術でしか勝てません。

次にコンセプトづくりを行ってみましょう。あなたらしさの再確認です。
(1) なぜカレー屋を開業したいのか。
お客様と無の境地に至りたい。せかせかした浮世を忘れたい。
(2) どんなお店を作りたいのか。
般若心経をイメージしたカレー屋
(3) 看板メニュー
菩提薩婆(ぼじそわ)カレー:食べたものが幸せになれるカレー。
(4) 特別メニュー(マニア向け)
色即是空カレー
激辛!完食無料!(むしろ「辛さ100倍、カレーパンマン!」かも)
あまりに辛くて涅槃(ニルヴァーナ)に至る?

上に記載したどんなカレーになるかはご想像にお任せしますが、あなたが想定したお客様に価値のあるメニュー、サービス、店の雰囲気を思い浮かべて、より具体化していきましょう。
メニュー:味や種類、メインメニューとサイドメニューを何にするか。
夏限定、冬限定メニューを何にするか。
例えば夏はさっぱり目、冬にはスープカレー等。
価格帯。
サービス:無の心を伝える、おもてなし、おしぼりを食事の前後で取り換える等
雰囲気 :清潔感
明るく、落ち着いた雰囲気

カレー店で提供するのは、必ずしもカレーだけではありません。この店に来ると別の世界が味わえる、そんな世界観に期待して来られるお客様もいらっしゃいます。成功店では、キャンプを意識させる野菜盛りカレー、酒も飲めるカレーバー、健康にやさしい薬膳カレー、ワンちゃんと一緒に食べられるドッグカレー屋等、多くの先人たちが彼らの世界観を存分に表しております。

4. 物件
カレー屋も立地が勝負といえます。但し、あなたのコンセプトに合った立地という意味であり、必ずしも一等地でなければ商売にならないということではありません。
オフィス街に店舗を構える場合、ランチタイムが稼ぎ時となります。会社勤めは昼休みが1時間に限定されており(やめる直前では昼休みが長くなったり残業しなくなったりしますが)、あまり遠出ができません。自分の場合、昼は5分くらいで行ける価格が高めの個人経営のカレー屋、夜は10分くらいかかるCoCoイチと決めつけていたものです。やはり癖のない味がリピートしてもいいと思わせる味になりますね。
繁華街に構える場合には、入りやすそうな雰囲気のカレー屋に行きます。そうでなければ、近くにCoCoイチやゴーゴーカレーがあったら、間違いなくそちらに入ってしまいますよ。
ロードサイドに構える場合では、看板や店の作りが、遠くからくる車でも見える店づくりが必要です。そうでなければ、やはり、何度でも固有名詞を書くのも気が引けるので、有名店に看板を見つけて入ってしまいます。
そして住宅街に店舗を構えるケースでは、お袋と嫁の味がライバルですし、帰りのビジネスパーソンも、今帰ってこないでくれ、と嫁に言われない限りは早く帰らないと怒られますからね。ふらり客がカレーを食べることは考えづらいので、お一人様をどう引き込んでいくかです。その点、仕事帰りに、野菜が不足している独り者には、一日分の野菜を取れるカレーというコンセプトは、非常に胸に刺さるわけです。
このようにコンセプトは立地の決定にかなり影響を与えるといってよいでしょう。
出店地域を調査するにあたっては、昼間人口、夜間人口、最寄り駅の乗降客数、業種別の就業者数、地域住民の外食費用、地域の飲食店数と年間販売額等を押さえておきましょう。
競合店は念のため3キロ以内の店舗を対象とし、客数、メニュー、単価、客層等を注意深く見ておきましょう。また同じカレー屋だけが競合店とも限りません。定食やファミリーレストランも十分に競合といえます。
出店エリアの商圏調査を行ったのち、物件の目途がつき、契約に至ったときに、再度契約書で、物件の広さ、賃料等契約事項は約束通りか、夜の営業が許されているか、改めてカレー屋だが問題がないか等を貸主に確認しましょう。

物件や内装だけでなく、設備や機能のチェックも忘れずに。飲食店ですから電気、ガスの容量、ガスの栓数、給排水設備も重要です。厨房からの匂いや煙、油は周辺とのトラブルのもととなります。厨房内がサウナのようになってしまうと、調理人の作業効率は落ちますし、厨房と客席は同じ空間だとすると、お客様へ不快感を与えてしまいます。ある店では火と油を使っている姿をパフォーマンスとして見せて、それをウリにしています。
排気設備は数百万円単位の投資が必要になります。また、空調設備についても、メンテナンスが借主、貸主どちらが責任を負うか(費用負担)をチェックしておいた方が良いでしょう。
居抜き物件は設備が設置されており、安上がりに済む場合もありますが、新品ではないために故障が起きやすく、買い替えとなると設備の廃棄代や新規設備の購入代金とかえってコストがかかるリスクがありますので、注意しましょう。

お客様がお店に期待していることは、「飽きの来ない変化」と「変わらぬ安心感」です。言葉をよく見ると「変わることだけが唯一変わらないこと」みたいな、深いことを言っているのですが、瞬時には理解できない言葉のようです。
お客様は基本わがままです。同じものばかりですと、たまに来ればいいやとなってしまいます。たまに来ようと思ったら移り気で他のカレー屋に移ってしまうかもしれません。これを両立させるのが、季節商品を扱うということ、春限定、夏限定、秋限定、冬限定メニューを作れば、年4回も変えられます。
内装も大幅には変えられませんが、年4回雰囲気を変えるチャンスがあるというわけです。日本の四季には感謝しましょう。四季のない国では、変える理由を探すのが一苦労です。しかもこの限定メニューに弱くて、いつまでしか食べられないなら、それが終わる前にまた来なきゃと思ってしまうものです。そしていつも同じものを食べてる自分がいます。

元々夏をテーマに売り出したバンドは、夏は受けますが、冬にはラジオでも聞かれない、なんてこともありますので、カレー屋ではあまり季節感をコンセプトにしない方が良いかもしれません。
もっとも夏には海の家でカレー屋、冬にはスキー場のゲレンデでカレー屋等、日本の四季に合わせて、移動販売をしているお店であれば構いませんけれども。

5. 開業資金
ここでは20坪程度で都内の駅から徒歩数分以内、13席のラーメン屋を想定してみました。どちらの駅かはご想像にお任せします。

(1) 物件取得費
保証金、前家賃、仲介手数料
(2) 設備工事費
内装工事費、設備工事費(空調工事、電気、水道、ガスの工事、厨房設備込)
(3) 備品等
レジスター、テーブル、椅子、券売機等
(4) その他諸経費
仕入、運転資金

6. 収支計画

顧客単価を昼700円、夜1,200円として、1日平均100人来店と仮定しました。

設備投資は3,000,000円、10年で償却。
自己資金で200万円を用意し、借入は800万円とします。期待ケースでは6年で返済可能です。ケース4及び期待ケースの売り上げであれば、十分に融資の検討余地があります。仕入れは30%としています。期待ケースでは店主の他、店主の奥さんとアルバイトを1~2名雇っている計算にしております。
火と油を大量に使うことから、設備の老朽化は早く、3~5年で調理場の改修をする必要が出てきます。そのときに再び融資で資金調達を行うか、あるいはそれを見越して内部留保しておきたいところです。

カレーのオリジナル性を追求するためには、まだ日本人が見ていない世界のカレーから参考になるものもあるかもしれません。カレー店を開業する前に、バックパッカーで世界のカレーを食べに行ったという強者もいらっしゃいます。その点、カレーは無限大といえましょう。

カレーはお客様のお袋の味が最大のライバルなのですが、昔子供の頃に食べた味は一種の幻想です。現実は幻想には敵いません。その幻想に挑むだけの価値があるのがカレーという料理なのです。

しかし我々はなぜカレーに魅了されるのでしょうか。刺激の中に、安らぎの境地があるのではないか。それがゼロを生んだインドという国が作り出したカレーという料理であり、間違ったことを叱ってくれたけれども、最後の砦にもなってくれたお袋の存在。

お袋の作ってくれたカレーという幻想を追い求め、今日もまたカレーを食べる自分がいるのです。


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