
日本政策金融公庫の創業融資を受けるためには、融資の申し込みを行う必要があります。そこでは①借入申込書、②創業計画書、③設備資金の申し込みの場合は見積書、④履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)、⑤担保設定をする際には、不動産の登記簿謄本等が必要となります。ここでは創業計画書を記入する際の注意点を説明します。
- 新創業融資制度
- 創業計画書と事業計画書
- 創業計画書の書き方
- おわりに
- 新創業融資制度
新創業融資制度を要約すると次の通りです(平成28年3月現在)。
利用できる人:①から③の全ての要件に該当する人
- 創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
- 雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件
次のいずれかに該当する方。
(1)雇用の創出を伴う事業を始める方
(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
(6)地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
(8)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方
- 自己資金の要件
事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方。
資金使途 : 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金
融資限度額 : 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
返済期間 : 設備資金15年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金5年以内(特に必要な場合は7年以内。うち据置期間1年以内)
利率 : 都度変わりますので、日本政策金融公庫のホームページをご覧ください。
担保保証人 : 原則不要
- 創業計画書と事業計画書
創業計画書は創業融資時に提出を要求されている日本政策金融公庫フォーマットです。事業計画書をよりコンパクトにまとめたものです。
- 創業計画書の書き方
創業計画書の構成は次の通りです。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係等
- 従業員
- お借入れの状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(月平均)
それぞれの注意点を簡単に見ていきましょう。
- 創業の動機
単なる思い付き、軽い気持ちからではなく、強い動機で創業に臨んでいることをアピールしましょう。
- 経営者の略歴等
これから始めることと今までやってきたことに関連性がなければなりません。全く経験のないことを行う時点で、融資の対象にはなりません。
どこに勤めていたかも、有名企業であれば加点ポイントになりますが、むしろ何をやってきたかの方が重要です。具体的に説明できるようにしましょう。
- 取扱商品・サービス
3つ欄がありますが、一つだけでも構いません。セールスポイントについては自社の事業がどれだけ優れているかをアピールしましょう。
- 取引先・取引関係等
販売先、仕入先、外注先、人件費の支払いを記載する欄があります。販売先については、売上に直結するところですので、契約書や関係を表す資料があればベターです。もしあなたの企業の強みが市場価格よりも安く仕入れられることでしたら、仕入れ先との契約書があるとなおよいでしょう。
- 従業員
人員計画に用いた予定の人数を埋めてください。
- お借入れの状況
自動車ローン、教育ローン、住宅ローン、その他の借り入れについては正直に書きましょう。後でばれたら、それは詐欺ですよ。
- 必要な資金と調達方法
あくまでもキャッシュフローベースで今回の借り入れはいくら必要かを明確にします。新創業融資制度では事業に必要な資金の10分の1以上は自己資金で用意する必要があります。自己資金を証明する通帳を準備しましょう。法人口座に自己資金を資本金として移動している場合、その資本金も当然自己資金となります。
右側の欄には、調達先が色々記載されています。「自己資金」「親、兄弟、知人、友人等からの借入」「日本政策金融公庫(国民生活事業)からの借入」「ほかの金融機関からの借入」等です。ここでいう「自己資金」が調達総額の10分の1以上であるかを確認しましょう。
- 事業の見通し(月平均)
事業計画で作成した売上高、売上原価、人件費、その他の経費等を記載します。大きな金額のものだけでかまいませんし、あとは「その他」に入れ込んでしまって大丈夫です。数字の根拠について細かく尋ねられたときにきちんと答えられるようにしましょう。
- おわりに
創業計画書はあくまでも事業計画書の要約版です。事業計画書をきっちりと書いてから、その内容を創業計画書に転記するようにしましょう。創業計画書しか書かなければ、融資担当者に熱意も伝わりませんし、内容として薄っぺらい物にしかなりません。創業計画書だけしか要求されていないから、事業計画書は不要ではないのです。