
起業した直後は、売上も立たずに不安になります。そこでサラリーマンだった方は失業保険が貰えるはずと考えてしまいます。転職の後は失業保険の受給を思い浮かべますが、起業家は失業保険を貰えるのでしょうか。
- 失業保険の受給資格
- 起業家が失業保険?
- おわりに
- 失業保険の受給資格
失業保険とは、失業中の生活を心配することなく新しい仕事探しに専念し、再就職するために支給されるものです。
この失業保険の受給資格は次の二つです。
【自己都合の場合】
①離職の日以前の2年間に雇用保険に加入していた期間が満12ヶ月以上であること。
②離職日からさかのぼって1ヶ月ごとに区切った期間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること。
【会社都合の場合】
①離職の日以前1年間に雇用保険に加入していた期間が満6ヶ月以上であること。
②離職日からさかのぼって1ヶ月ごとに区切った期間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が6ヶ月以上あること。
あなたも起業を準備してきて、いよいよ退職の日を迎えました。起業してから数か月間は売上がすぐに立たないので、数か月間無給を覚悟しなければなりません。考えてみれば、雇用保険入っていたしなあ。貰えるものは貰っとけ。
起業家であるあなたは、会社の代表取締役に就任しました。しかしまだ売り上げの見込みがなく、自分の懐に数か月入金がないな、それではハローワークにいざ参上!
「僕って失業者~♪」
ちょっと待って下さい。そもそも失業保険と言うのは、次に再就職を希望している人の制度です。あなた再就職する気ないですよね。
- 起業家が失業保険?
結論から言いましょう。
起業する気満々な人は、失業保険は受給できません。
行政手引(51255)によると、「会社の役員に就任している場合」は、1日の労働時間に関わらず就職しているものとみなして取り扱うとしています。つまり役員に就任した時点で、失業の状態にないとして、雇用保険・基本手当は受給できないことになります。
もっともあなたが起業をする気がなくて「非常勤の取締役、監査役等であって、報酬を1日当たり内職収入の控除額(1,296円、平成24年8月1日~)」の範囲を超えていないことが確実と認められる場合は除く」としてますから、報酬がゼロであることを証明できれば受給できます。「非常勤」「報酬ゼロ」の二つの要件が重要です。この場合は名板貸しに当たります。しかもこういった「非常勤」「報酬ゼロ」も、きちんと「失業認定申告書」に記載しなければ、不正受給の対象となります。
このような不正受給が行われた場合、その不正行為があった日以降の日について、基本手当等が一切支給されず、不正に受給した基本手当等の相当額(不正受給金額)の返還が命ぜられます。さらに、返還が命ぜられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付(いわゆる「3倍返し」)が命ぜられることとなります。
繰り返します。制度的に失業保険とは再就職をする人に対する制度であり、起業家が使える制度ではありません。あなたが数か月報酬がなかったとしても、常勤取締役であれば、失業保険を受給した場合、不正受給の対象となります。代表なんですから、普通は常勤と思われますよね。
代表を他の人にやってもらって、実質あなたが動いているにもかかわらず、非常勤であると白を切るとします。ハローワークの人もあなたが嘘をついているかどうか確認するすべがないですから、おそらく失業保険は貰えるでしょうが、ばれたら不正受給ですよ。3倍返しですから、半沢直樹よりすごいですよ。
そもそも、起業家たる人間が、そんなせこいことでいいんですか。自力で稼ごうというのが起業家です。その他力本願の考え方と、そんなところで逃げていたら、危機感も生まれず、受給期間中は本気になれませんよ。稼がなければヤバいと自分にプレッシャーをかけなければ、起業なんて上手くいきません。保険をかける奴は起業家失格です。
- おわりに
失業保険は再就職を考えている方の制度で、起業家が使った場合、不正受給となり、半沢直樹以上の3倍返しが待っています。
そもそも起業家は稼ぐのが本職であり、稼ぐまでの間保険を貰おうという逃げの根性では、起業後の困難に耐えきれないでしょう。失業保険を貰おうと思った時点で、起業を諦め、次の転職先を探した方が身のためです。自分自身に自信を持てないあなたは起業しても成功することはありません。